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北洋航海乗船報告 (2005年)
おしょろ丸第159次航海(2005年6月27日〜8月25日)、通称「北洋航海(ほくようこうかい)」には私たちの研究室から教官1名(山口 篤)、大学院生2名(加藤 健、北辻さほ)および四年生2名(佐藤健一、福井亮平)が乗船しました。この航海はアラスカからハワイまでの北太平洋を広くカバーするもので(図1)、採集されたプランクトン試料はこれからの研究室の財産として広く活用されるものです。乗船した学生はそれぞれの研究テーマに関連した飼育実験や観察を行いました。以下に航海帰着時に作成したレポートの一部を紹介します。


    (図 1: 北洋航海航路図)


            2005年北洋航海乗船報告
                               修士課程 1年 北辻さほ

おしょろ丸第159次航海(2005年6月27日〜8月25日)に乗船し、観測・試料採集・船上実験を行った。航海中は全てのレグにおいて観測・試料採集を行った。また、プランクトン教室の仕事以外では海鳥目視・操業・ニスキン採水・XCTDおよびCTDオペレーションを手伝い、海洋観測を知ることができ、よい経験になった。
今回の乗船では、修論の研究対象種であるEucalanus bungiiの核酸分析用の試料採集と、Eucalanus bungiiおよびその近縁種について呼吸速度の測定を行った(Eucalanus bungiiについて)。

1.核酸分析用の試料採集
レグ1(函館〜ダッチハーバー)の10地点、レグ2(ベーリング海)の1地点、レグ3(ダッチハーバー〜ハワイ)の西経165°ラインの2地点で採集した。
80cmリングネットまたは標準ガマグチネット(60μm)の0〜250mの鉛直曳きにより採集した(図 2)。標準ガマグチネット(60μm)は、主に若い成長段階の個体(C1、C2)の採集を目的として使用した。Eucalanus bungiiをC1〜C6の成長段階別にソート(図 3)、液体窒素で保存し持ち帰った。今後は、核酸比を分析し、成長速度を見積もる予定である。



   (図 2, 3: 採集風景とソーティング風景)

2.呼吸速度の測定
レグ1(函館〜ダッチハーバー)の10地点、レグ2(ベーリング海)の1地点、レグ3(ダッチハーバー〜ハワイ)の西経165°ラインの9地点、レグ4(ハワイ〜函館)の4地点で行った。80cmリングネットまたは標準ガマグチネット(60μm)の0〜250mの鉛直曳きにより採集した。実験海水には現場の表面海水を用いた。GF/Fフィルターでろ過し、よく振って100%飽和海水として使用した。表面水温に応じて5℃、10℃、15℃でインキュベートした。北太平洋亜寒帯域(レグ1、2、レグ3北部7地点)ではEucalanus bungiiについて、亜熱帯域(レグ3南部2地点、レグ4)ではRhincalanus sp.やEucalanus hyalinusについて、成長段階別に(C3〜C6について)呼吸速度の測定を行った。実験後、動物個体は脱塩し冷凍保存して持ち帰った。今後は、動物個体の湿重量・乾重量を測定し、単位重量あたりの呼吸速度を算出して南北、東西差を考察する予定である。今回は、Eucalanus bungiiの結果について報告する。飼育水温が異なっているが、個体あたりの呼吸速度は、北で大きく、南で小さい傾向が見られる。

  今回は乗船経験が少なかったぶん、船生活やはじめての実験に対して不安が一杯だったが、多くの人の助けによって無事に終える事ができた。失敗もあったが、次の機会に生かしていきたいと思う。2ヶ月の乗船はとても良い経験になった。


           おしょろ丸第159次北洋航海乗船報告

                               修士課程 1年 加藤 健

 2005年6月27日から8月25日までの間、北海道大学水産学部練習船おしょろ丸の第159次北洋航海に乗船した。本航海は165°Eライン、セジメントトラップ回収を中心としたLeg1、ベーリング海調査のLeg2、165°Wラインを中心としたLeg3、ハワイからSite HまでのLeg4から構成された。プランクトン教室の観測としては、NORPACネット・VMPSによる固定試料採集、リングネット・がま口ネットによる飼育用サンプルの採集を中心に行った。また、CTD、XCTD観測、流し網、鯨類の目視観測、エアロゾル採集などの、他講座、他大学の観測を見学、手伝う機会があり良い経験となった。

 本航海では尾虫類による、海洋生態系においての高次動物への基礎生産の仲介者、深海への物質輸送の役割を定量的に調査するための、体組成分析用サンプルの採集を目的とした(尾虫類について)。サンプルは、Leg1からLeg4を通して、80 cmリングネット(一部がま口ネット)の水深250 mからの鉛直曳きにより採集した。しかしながら、全観測点のうち、分析できる十分な量が採集できたのは7地点のみで、冷水性種のO. labradoriensisと暖水性種のO. longicaudaの2種のみ採集することができた。採集されたサンプルは、実体顕微鏡で種査定、体長測定後に蒸留水で脱塩後、-80℃で凍結保存し、研究室に持ち帰った。また、飼育装置による尾虫類の飼育実験を行う予定であったが、ネット採集によるダメージが大きく、生きたサンプルを採集するのが困難だったため断念した。

 今後は、サンプルの湿重量、乾燥重量を測定後、体組成分析を業者に依頼する予定である。この分析の結果から、海域、種ごとによる違いを明らかにし、修士論文のテーマである『北太平洋における尾虫類の生物地理学的研究』の一部として考察する予定である。

 また、寄港先のハワイ(図 4)においてハワイ大学との合同シンポジウムがあり、12分の発表を行った(図 5)。発表は卒業論文を英訳したものであったが、英語での発表は初めてだったので良い経験となった。



   (図 4, 5: ハワイ入港とハワイ大学でのシンポジウム)

   ハワイ大学でのシンポジウムAbstractはこちら(pdfファイル)


その他のイベントとしては、Neocalanus cristatusの卵の孵化・発育速度の実験(図 6)を佐藤健一くん、通称パパがやったり(N. cristatusについてはこちらを参照ください)、

       
   
      (図 6: 水温とN. cristatusの発育時間の関係)

ハワイを出港してからすぐにトリコデスミウムの赤潮に出会って(図 7)、福井亮平くんがまとめたりと(図 8)、



  (図 7, 8: トリコデスミウムのブルームとその細胞数・群体密度)

2ヶ月間は色々なことがあって、とても良い経験になりました。

       

       (左から、北辻、加藤、佐藤、福井(亮)です)   



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北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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