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北太平洋亜寒帯域におけるNeocalanus
かいあし類3種の生活史と経年変動
小針 統(平成11年博士修了)
現在:鹿児島大学水産学部准教授(kobari@fish.kagoshima-u.ac.jp)

図1 Neocalanus cristatus
撮影:帰山
 北の海のネット動物プランクトン相に最も卓越するのが、かいあし類Neocalanus属です(図1)。毎年北海道や東北の港では秋になると脂ののったサンマが水揚げされ、食卓に秋の味覚を運んでくれます。サンマの主要な餌生物はNeocalanus属かいあし類です。Neocalanus属は植物プランクトンの春季ブルーム期に表層で活発に餌を食べ、体内に脂質として栄養分をため込んだ後、後期発育段階で深層に潜り、越冬する生活史を持っています。つまり春の植物プランクトンによる生産がNeocalanus属を経由して、秋のサンマに受け継がれているのです。

 太平洋亜寒帯域にNeocalanus属はN. cristatusN. flemingeriN. plumchrusの3種が出現するのですが、その生活史は西部北太平洋亜寒帯域では長い間不明なままでした。本研究では釧路沖の親潮域において経時的なプランクトン採集を行い、3種の生活史とそれに伴う深度分布の解析を行いました。また1979年から1997年の19年間にわたってプランクトン採集が継続された中央北太平洋の試料を観察し、Neocalanus属の緯度変化と経年変動についても解析を行いました

 親潮域において3種とも表層で急速に発育し、後期発育段階は深層で越冬・産卵し、世代時間は1年(N. flemingeriの1部は2年)ですが、越冬する水深は600 m(N. flemingeri)、800 m(N. plumchrus)、1000 m(N. cristatus)と種間で微妙に異なりました。また越冬する発育段階もコペポディド5期(N. cristatusN. plumchrus)と親成体(N. flemingeri)と異なります。3種ともコペポディド1期から5期の成長は表層で行いますが、表層に出てくる時期も2月〜6月(N. cristatus)、3月〜5月(N. flemingeri)、5月〜7月(N. plumchrus)と互いに変え、競合を避けていました。
 中央北太平洋での経年変動の解析では、Neocalanus属の出現個体数は3種共通して奇数年に少なく、偶数年に多くなることがわかりました。また、植物プランクトンの指標であるクロロフィル濃度とは有意な負の相関、動物プランクトン湿重量と有意な正の相関を示し、サケの単位時間あたり漁獲量とも負の相関関係が見られました。しかし、これらの生物的要因だけでは観察された経年変動のごく一部を説明するにすぎず、主要因については特定できませんでした。
 北の海のプランクトン生態系においてNeocalanus属かいあし類は鍵種(Key species)であると考えられています。本研究によってNeocalanus属かいあし類の生活史の概略とその変動要因の一部が明らかになりましたが、今後更なる研究が必要であることはいうまでもありません。

Neocalanus cristatus
撮影:帰山

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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