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西部亜寒帯北太平洋親潮域における
オンケア科カイアシ類(ポエキロストム目)の生物学的研究

西部裕一郎(平成17年博士課程修了)

現在:東京大学大気海洋研特任准教授
 カイアシ類は海洋に出現する後生動物プランクトンの中で数量的に最も重要なグループです。カイアシ類の研究は、メッシュサイズが0.2-0.33 mmの標準ネットで豊富に採集される比較的大型サイズの種(主にカラヌス目)を中心として発展してきました。ところが、この標準ネットでは体が小さすぎて採集できない小型のカイアシ類 (体長 <1 mm) が、意外に多く生息していることが最近の研究で分かってきました。ポエキロストム目のオンケア科(図)はその代表的なグループで、世界中の海洋に広く分布しており、特に外洋域の水深が200 mよりも深い中・深層で卓越することが知られています。しかし、オンケア科の生物学的特性に関する研究は未だ少なく、海洋生態系における彼等の役割や重要性についてはほとんど知られていません。

 本研究では、親潮域において水深2000 mまでを季節的に採集した試料を観察し、オンケア科の鉛直分布、群集構造、優占種の生活史について調べました。加えて、室内飼育実験によって優占種の呼吸速度と体化学成分について測定し、摂餌量の推定を試みました。
 親潮域ではオンケア科は表層から深層にかけて幅広く分布しており、個体数ではNeocalanusEucalanusなどの大型カラヌス目(研究成果1, 4を参照)よりも5倍以上多いものの、生物量ではその2%以下であることが分かりました。また、親潮域では未記載種を含む40種のオンケア科が出現し、そのうちTriconia borealis, T. canadensis, Oncaea grossa, O. parilaの4種(図1)が周年を通して数量的に優占していました。これらの優占種について個体群構造の季節的な変化を調べたところ、T. canadensisO. grossaについては世代時間(約1年)と産卵盛期(前者は秋期、後者は夏期)を明らかにすることができました。また、優占4種の呼吸速度は同じ体サイズ、同じ水温でのカラヌス目のそれに比べて約1/2であり、遊泳や摂餌に必要なエネルギーが小さいことが主な理由と考えられました。生物量と呼吸速度のデータから、親潮域の中・深層に生息するオンケア科群集の摂餌量を試算したところ、彼等は深海へと沈降していく粒状有機炭素を年間で2.4%を消費しうると推定されました。

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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