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ご挨拶と近況ご報告:平成26年
今井一郎
今冬の初雪は11月11日,その後は年末まで降雪は大したことなかったのですが,新年が明けて以来雪が降り続け,小寒以降は真冬日が続き,ここ2?3年と同様結構雪が多くなっているようです。昨年は家内が雪掻き中に転倒して左肘を骨折し,散々な冬でした。今年は事故の無い事を祈っています。雪掻きの際は充分ご注意下さい。
さて,昨年のPLO通信では,枝豆の新しい蒸し茹での仕方とその作品がたいそう美味しかった事について述べました。函館の食べ物に関してはもうネタ切れかと思っていましたが,昨年は家内の事故のお陰で私が炊事軍曹を務めることになり,晩ご飯のおかずの調達過程で色々探索し発見する事が出来ました。もう今頃の季節に店頭に並ぶようになっていますが,サクラマスの降海したホンマス(本鱒)が,塩焼きにすると大変美味しかったです。また晩春から夏に日本近海で時ならず定置網で漁獲されるトキシラズ(時鮭:産卵ではなく索餌回遊しながら晩春から夏に日本近海に来遊して漁獲される)も,塩焼きにしたところ,絶妙に脂がのっており秀逸でした。同じ頃,スーパーで謎めいた「青マス」というのもあり,調べるとカラフトマスのことでした。それぞれ定番の塩焼きとムニエルを比べるならば,個人的な感覚に基づく評価ですが,時鮭,本鱒,青鱒の順でしょうか。
次に今年は干物に目覚めたようです。ナメタガレイと宗八カレイの干物は絶品で,お酒の肴にもご飯のおかずにも絶好でした。特に宗八カレイは入用時に何時でも入手できるので,近頃は出張する際に仕事の相手側へのお土産に大活躍しております。
今秋のイクラ漬けは,筋子の新しいほぐし方を見つけて二回程自分で作って堪能しました。温度40?C強のお湯に筋子を入れると手や箸で簡単に粒がほぐれてバラバラに出来ました。再度お湯で洗ってごみを除き,冷水ですすいで水切りし,密閉容器に入れて二倍強度(濃度)の麺つゆにヒタヒタ程度に浸し一晩冷蔵庫に寝かせれば完成です。たっぷりと麺つゆを吸収してプクプクのプリンプリンになったイクラを熱いご飯に載せて食べれば,「痛風??,なんぼのもんじゃ?い!」と嘯いてしまう?程に美味いので,罪な食べ物に思えます。
野菜では,昨年六月に鳥取環境大学に出張した際に生のラッキョウを買って帰り,自分で処理してラッキョウ酢を作り,ラッキョウの表面を熱湯処理するだけの勘便バージョンで,ラッキョウ漬けを5kg程作りました。毎日食べるのも飽きるのですが,常に冷蔵庫に自家製のラッキョウがあるのは,プラスの一品で重宝しています。ラッキョウは残念ながら函館の特産ではないので,この辺にします。
昨年のPLO通信(六十三号)に報告しましたように,一昨年六月に米国ワシントン大学のフライデーハーバー実験所に,米国NOAAのVera L. Trainer博士らのグループとの共同研究で,二名の学生(当時博士課程二年の大西由花さんと修士課程二年の稲葉信晴君)と共に訪れ,アマモ場を対象として,有害有毒プランクトンを殺滅する,または増殖阻害する細菌の生態を調べる研究を始めました。昨年は,博士課程に進学した稲葉信晴君が再度訪れ,研究を継続しています。昨年春にはNorthwest Indian CollegeのMarco Hatch博士が主体となって,「アマモの表面の微生物を分離して有害有毒プランクトンの抑制に効果のあるものをスクリーニングする作業を通じて,学生の環境教育に資する」というプロジェクトを申請し,目出たく採択されました。そのお陰で,稲葉信晴君は今年三?六月にシアトルのNOAAとフライデーハーバー実験所,Northwest Indian Collegeに滞在します。私もNOAAとフライデーハーバー実験所へ今年の六月に行く事になりました。その際に,NOAAのNorthwest Fisheries Science Centerで開催されている『Monster Seminar JAM』にて,これまで取組んで来た有害有毒プランクトンを制御する殺藻細菌の研究について紹介する事になりました。Vera L. Trainer博士によると,このセミナーでの講演はとても名誉なことなのだそうで(私は知らない),一昨年のGordon Research Conferenceでの招待講演と同様,「知らぬが仏」なのかもしれません。何れにしても,ひょんな切掛けで始まったシアトルのNOAAとの交流は,ワシントン大学のフライデーハーバー実験所を舞台に「アマモ場」をキーワードとして暫くは続きそうです。
日本では,昨年から岡山に本拠を据える「里海づくり研究会議」と岡山県水産研究所の全面的バックアップを得て,鹿久居島現寺湾の大規模なアマモ場を舞台に有害赤潮の抑制を目指して研究が始まりました(写真1)。暫くは続けたいと考えています。
一昨年七月に生物研究社から出版した「シャットネラ赤潮の生物学」という専門書は,本日(2014年1月19日),AMAZONの売り上げランキングにおいて科学・テクノロジー「海洋学」のジャンルで瞬間的に10位のランキングでした。とてもありがたいことと思っています。
他に水産庁の受託研究として,海底泥中の珪藻類の休眠期細胞を有光層に人為的に持ち上げて発芽・復活させ,生じた栄養細胞によって水柱の栄養塩類を消費し尽くしてもらい,有害鞭毛藻類による有害な赤潮の発生を予防しようという研究が,開始されました。今年の春には二年目が始まりますが,どのようなやり方が良いのか,実施のタイミングはどうなのかといった点について明らかにして行きたいと考えます。
また,大沼公園の湖沼群においては,アオコの抑制に関する研究を続けています(PLOのLimnology)。新しい成果として,水草のヒシ類の水中葉等に膨大な数の細菌が付着しており,その中に有毒なアオコの原因生物Microcystis aeruginosaを殺藻するものが多数いる事を宮下洋平君(修士一年)等が発見し,その成果が昨年秋(十一月二十六日)には北海道新聞に報道されました。今後の更なる展開が楽しみです。
昨年のプランクトン研究室における大きなイベントとしては,改修工事の開始に伴う研究室全体の移転が挙げられます。アベノミクスのご利益で講義棟と管理研究棟の改修が認められ,管理研究棟は東側から順に第一?三期に分けて逐次着工,改修が行われます。プランクトン教室は第一期に該当し,学生さん達は管理研究棟5階のN504とS504に分かれて移動し,実験室は実験棟一階のW-101室に与えられ,全ての実験研究機材が移されました。私と山口 篤 准教授は,マリンフロンティア棟の二階の一角にスペースを与えられ,学生さん達とは離ればなれになってしまいました。移転は十二月十一日(水)に実行されました。今回は私にとって実に災難の日程であり,前の週の実に水?土曜日に水産庁受託研究の報告会で広島出張,移転前日の十日は函館にてプランクトン学講義の後札幌で五講目の講義(海と生命:一年生対象)があり,札幌に出張でした。夜に二回程朝方まで荷物の整理と箱詰めをした日がありましたが追いつかず,結局は荷物の大部分の箱詰めを学生さんのお世話になりました。ピンチを察して協力を申し出て戴いた学生さん達,ならびに実際に引っ越しの前日(私が札幌に出張している時)にファイルや書籍の箱詰めを実行して戴いた学生さん達に,本紙面を借りて御礼を申し上げます。因みに,マリンフロンティア棟は講堂の東側,体育館の南側に位置しており,本館とは建物が独立しているため,事務室や学生さん達のいる本館に用事のある時は,雪深いキャンパス内を長靴はいてダウンジャケットを着て重武装で出掛けております。第一期の工事は当初四月には終わる予定だったのが,何となく近頃のその筋の会話で「六月には??」という感じになってきております。新しい居室や実験室は三階になり,以前の場所の真上(建物の東端)になります。教員の部屋は以前の半分の広さになりますが,晴れて六月(?)の移転を楽しみにしております。
平成二十五年度の国内の学会活動について概略を報告します。私は今年度から沿岸環境学会連絡協議会の代表として運営に当たっております。日本プランクトン学会では,山口 篤 准教授が評議員として頑張っています。昨秋は,ベントス学会との合同大会が東北大学で開催されました。プランクトン教室から多くの学生が参加して発表を行い,その中で優秀学生発表賞が博士課程三年の夏池真史君に授与されました。今秋のベントス学会との合同大会は,広島大学で開催の予定です。その他,海洋学会や水産学会へも学生と教員共にコンスタントに出席し発表を行っております。因みに今春の水産学会は函館で開催され,本学水産科学研究院が運営に当たります。折角の良い機会ですので(旅費が不要),今春卒業の学生さん達に頑張って発表してもらう予定です。昨秋の三重大学での水産学会においては,有害有毒プランクトンの生物学に関するシンポジウムを開催しました。その時の内容を中心に,これから十年はバイブルになるような本を出版するという野望を抱いております。乞うご期待。
生物研究社から出版されている隔月刊誌「海洋と生物」に「有害有毒赤潮の生物学」を連載中ですが,平成二十五年末で丸五年が経過し,計三十回刊行されました。当面は代表的な有害有毒プランクトンの生物学を紹介して行く予定で,まだまだ続けます。ご笑覧を戴ければ幸甚です。
国際学会では,北太平洋海洋科学機構(PICES)において,私は有害有毒赤潮部門(HAB section),AICE-AP (Advisory Panel on Anthropogenic Influences on Coastal Ecosystems),ならびにMEQ(Marine Environment Quality)の委員として活動しております。昨年はカナダのナナイモで年次会合が開かれました。因みにナナイモ周辺の日本人会の名称は『7 potatoes』といい,同じHABグループの仲間であるバンクーバーアイランド大学のNicola Haigh博士に「In Japanese, Nanaimo means seven potatoes.」 と冗談で懇親会の時に話したら,しばらくは『Seven Potatoes!!』と連呼して乾杯し大いに盛り上がりました。PICESへは我がプランクトン研究室から2名の学生が出席し,修士一年の有馬大地君がBIOベストポスター発表賞を獲得して,水産学部のホームページにも紹介されました。本年のPICES年次会合は,韓国の麗水(ヨス)市で十月に開催されます。
ASLO(先進陸水海洋学会水圏科学会議:Association for the Sciences of Limnology and oceanography, Aquatic Science Meeting)が本年二月にハワイで開催されます。この会議(学会)では,博士課程の仲村康秀君と大西由花さんが出席します。祈る健闘。
私の専門分野の最も重要な国際学会としてInternational Society for the Study of Harmful Algae(ISSHA: 国際有害有毒藻類研究学会)があります。今年十月二十七?三十一日に,ニュージーランドの主都ウェリントンでICHA16 2014 (16th International Conference of Harmful Algae) が開催されます。この学会の組織委員会において,International Advisory Committee memberとして運営に協力します。プランクトン研究室からは博士課程の学生を中心に発表に参加してもらいたいと考えております。
平成二十五年度のプランクトン教室は,博士課程六名,修士課程五名(修士二年二名,一年三名),四年生五名,極地研ポスドク一名の総勢十七名の構成でした。平成二十五年度末で,博士課程三年の二名が学位を取得して卒業の予定です。博士論文の執筆,ご苦労様でした。二名の修士二年生は一名が卒業,一名は残留の予定です。現在五名在籍する四年生のうち,二人が就職(六花亭と長崎県),一人が他大学院進学(北大環境科学院),二名がプランクトン教室に進学の予定です。以上から平成二十六年度は,博士課程二年が四名,社会人の博士課程一年が一名の計五名の博士課程の構成となる予定です。修士課程は二年が四名,一年が二名の計六名になりそうです。プランクトン教室には新四年生を今春六名迎えます。以上から,学生の総勢十七名(+ポスドク一名)の所帯で,相変わらず賑やかです。
PLO会員の皆様,ご来函された際にはプランクトン教室にも気軽にお立寄下さいませ。学生さん達と共に大いに歓迎します。末筆ながら,PLO会員の皆様方の益々のご活躍とご清祥をお祈り申し上げます。
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Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)
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