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西部北太平洋亜寒帯域における
プランクトン食物連鎖構造
品田晃良(平成12年博士修了)
現在:北海道立中央水産試験場研究員
 海洋において全ての有機物は植物によって生産されます。それではこの有機物はその後、どのような経路を通って魚類生産まで到達するのでしょうか。1983年にアメリカのAzamは、それまで単に有機物の分解者としてとらえられていたバクテリア(下図 )からはじまる食物連鎖(微生物ループ:microbial loop)が存在することを示しました。

図(バクテリア)
 実は海洋において有機物の大半は溶存有機物(DOM: Dissolved organic matter)の形で存在しています。バクテリアはDOMを利用するので、溶存態の有機物を粒子状の有機物(=バクテリア自体)に変換することができます。粒子状の有機物ならば他の動物プランクトンも食べることができるので、バクテリアからはじまる食物連鎖もあるということを示したのです。その後、さまざまな海域で研究が行われ、現在では生産量の少ない海域などではその生産物の大半が微生物ループを通って、高次栄養段階に受け渡されることが明らかになってきました。この微生物ループの特徴は、魚類生産に到達するまで多数の栄養段階が含まれるため、植物プランクトン生産から魚類生産までの転換効率が低くなることにあります。西部北太平洋の親潮域は春に植物プランクトンの大規模なブルームがあることから、世界的にも生産量が高い海域として知られています。しかし、この海域における微生物ループの機能については長い間不明なままでした。

 本研究では釧路沖と恵山岬沖の2つの海域において全てのプランクトン群集構成者の生物量を明らかにし、増殖速度と摂食速度を実験的に確かめることにより、生産物がどのような経路を通って高次栄養段階に受け渡されるのかを調べました。その結果、調査を行った両海域とも、どの季節も生産物の多くは微生物ループに流れていることが明らかになりました。植物プランクトン生産物が直接大型動物プランクトンに食べられる、いわゆる生食食物連鎖(grazing food chain)は、大型の植物プランクトンの多い春季ブルーム期にのみ駆動していることが分かりました。西部北太平洋亜寒帯域は北大西洋や東部北太平洋など他の海域に比べても、特に春季において生食食物連鎖が稼働することにより、転換効率の良い海域であることが示されました。

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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