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2003〜2006年夏季の北太平洋亜寒帯域における
動物プランクトン群集の東西比較

齋藤 類(平成25年博士課程修了)

現在:東京大学大気海洋研特別研究員
 北太平洋亜寒帯域は生物生産の高い海域で、西部は低水温で高クロロフィル a (Chl-a)、東部は高水温で低 Chl-a であることが知られています。このような海洋環境と植物プランクトン群集の東西差は、動物プランクトンの個体数や群集構造に影響することが予想されます。これまで動物プランクトン群集の東西差として、世代時間や生活史タイミングが東西で異なること、体サイズが西部で大型なこと等が報告されていますが、採集時期や調査方法が東西で異なっており、群集構造全体の東西差を明らかにした研究は多くありません。本研究では北太平洋亜寒帯域の東経165度線 (西部北太平洋) と西経165度線 (東部北太平洋) で、夏季に動物プランクトンを採集・解析し、主要動物プランクトン群集の東西差を明らかにしました。

 動物プランクトン試料を2003-2006年の6-8月に東経165度線上と西経165度線上の北緯39度-53度30分間の4-16定点において、目合い335 μmと100 μm の双子型 NORPAC ネットによる水深0-150 m 間を鉛直曳きで採集しました。採集と同時に CTD による水温、塩分と Chl-a の測定を行いました。目合い335 μm の試料は湿重量を測定し、目合い100 m の試料は実体顕微鏡下で動物プランンクトンを分類群毎に計数しました。主要大型カラヌス目カイアシ類 Neocalanus cristatus、N. flemingeri、N. plumchrus、Eucalanus bungii Metridia pacifica は発育段階毎に計数しました。Neocalanus 属、E. bungii と M. pacifica の後期発育段階については、体サイズ (頭胸部長)を測定しました。カイアシ類と共にバイオマスで優占するヒドロクラゲ類 Aglantha digitale も計数し、体サイズ (傘長) と生殖腺の長さを測定しました。
図1. 全動物プランクトン個体数の東西比較。
赤丸をした年および領域に有意な東西差がありました。
 本研究によって、これまで報告されている海洋環境と植物プランクトン群集の東西差だけでなく、動物プランクトン群集に関しても東西差が存在することが明らかになりました。動物プランクトン群集の東西差には3つの特徴があり、1:全動物プランクトンの個体数は西部で東部より多く (図1)、2:大型カラヌス目カイアシ類の体サイズも西部で東部より大型でしたが (図2)、3:ヒドロクラゲ類 A. digitale は東部で西部より個体数が多くなっていました。全動物プランクトン群集の個体数が西部で多く、ヒドロクラゲ類が東部で多かったことは、植物プランクトンによる一次生産の規模や植物プランクトンのサイズに起因すると考えられました。カラヌス目カイアシ類の体サイズが西部で大型であったことは、西部の低水温が主な要因と考えられました(図2)。このように海洋環境と植物プランクトン群集および海洋生態系構造の東西差が動物プランクトン群集の個体数と体サイズに影響を及ぼすことが示唆されました。

本研究の内容は、以下の論文にて発表されました。
Saito, R., A. Yamaguchi, S.-i. Saitoh, K. Kuma and I. Imai (2011). East-west comparison of the zooplankton community in the subarctic Pacific during summers of 2003-2006. Journal of Plankton Research 33: 145-160.

図2. 大型カイアシ類の体サイズと現場積算平均水温との関係

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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