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有毒渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseの増殖阻害細菌の生理生態学的研究

大西由花(平成26博士修了)

 日本沿岸域において, ホタテ貝, カキ, アサリ, ヒオウギなどの二枚貝類の養殖は盛んであり, 食卓を彩る貴重な水産食品のひとつです。有毒渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseは, フグ毒に似た強力な神経毒を生産し, 二枚貝に摂餌され麻痺性貝毒を生じることで知られています。1980年以降, 稚貝の種苗の移動放流などにより, 貝毒発生水域の拡大および発生件数の増大が認められ, 発生予防策の確立は急を要しています。近年, 赤潮による被害を軽減・防止するために, 赤潮藻類を殺滅する微生物を用いた生物学的防除法が着目されています。それらがアマモ表面のバイオフィルム中に高密度で存在するという事実も明らかにされました。本研究では, 北海道のアマモ場においてA. tamarense に対する増殖阻害細菌を探索し, 強い効力を持つ細菌の増殖阻害活性を検証しました。

 本研究では, 函館市臼尻漁港の港内に繁茂しているアマモを用いて実験を行いました。ポリプロピレン容器に採取し, 滅菌濾過海水を加え強振することで葉体表面から細菌を剥離しました。次に, 強振後の海水を段階希釈し, マイクロプレートMPN法に供し, 増殖阻害細菌を単離しました。得られた細菌株の中でも, A. tamarenseに対して特に強い増殖阻害能を持つ細菌株を選抜した結果, E8株, E9株を実験に用いることとしました。
    

 細菌の持つA. tamarense増殖阻害能が, 細菌の接種密度によって異なるのかを検証するために, 以下の実験を行いました。増殖阻害細菌E8株, E9株を, 100〜106 cells mL-1までの4段階になるよう希釈し, A. tamarense培養に添加しました。滅菌濾過海水を加えたControlも設け, 蛍光光度計で蛍光値を測定し, A. tamarenseの増減を追いました。その結果, どちらの細菌株も, どの細菌添加密度でも, 増殖阻害が確認されました(上図を参照)。

 本研究により, 北海道のアマモ場が持つ麻痺性貝毒防除能が評価されました。今後は, より広大なアマモ場においてA. tamarense増殖阻害細菌の研究を展開することにより, 健全で安定的な二枚貝類の生産を支える方策を探る必要があります。

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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