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ヨシ帯起源の細菌を活用したアオコの発生抑制に関する
生理生態学的研究
扇 航平(平成23年修士修了)
現在:SOC(株)

 淡水資源は人類の生命や様々な活動を支える上で最も重要なものの一つです。藍藻Microcystis aeruginosaは富栄養化湖沼においてアオコを形成し、ミクロキスチンという毒で水を汚染します。本種の防除は貴重な淡水資源の確保の上で重要ですが, 未だ有効な方法が確立されていません。近年世界各国でアオコや有害有毒藻類ブルーム (HAB) の抑制において, 殺藻細菌を用いた抑制方法が注目を集め, 精力的な研究が行われています。そこで本研究では, 高い水質浄化能力を持ち, 細菌が高密度に生息するバイオフィルムを有するヨシを起源とする細菌を活用した, アオコの発生抑制に関する生理・生態学的知見を得ることを目的としました。
 本研究では, 大沼で発生しているアオコにヨシ帯の水を導入した混合培養実験を行いました。混合培養実験では大沼から採集されたアオコ試料に, 段階的な濃度 (1/10〜1/1000) でヨシ帯の水を添加し3週間実験を行いました。実験期間中1週間おきに試水を採取して, 総細菌数, M. aeruginosaに対する殺藻細菌数, アオコを含む植物プランクトン細胞数, そして蛍光値 (植物プランクトン量) の測定を行いました。
 ヨシ帯の水を添加した実験区では, M. aeruginosa細胞数の約80%以上が殺滅されました。特に, ヨシ帯の水をわずかに1/1000添加した実験区でもアオコは3週間でほぼ全部殺滅されていました (図1)。同時に殺藻細菌の増加も確認され, ヨシ帯起源の殺藻細菌がアオコを退治していることが明らかとなりました。加えて, アオコの消滅と共に他の無害な微細藻類の増加が見られ, 生態系への影響が少ないことが示されました。
 本研究の結果により, ヨシ帯を活用したアオコ発生の抑制は環境への影響がほぼなく, 非常に有用である可能性が示唆されました。ヨシは高い水質浄化能力を有しており, また民芸品やバイオエタノール, 肥料といった産業への応用も期待されています。従って, ヨシ帯をキーとした産業の発展や水域再生への応用が期待されると共に, 大沼公園域はこのような里湖構想の良いモデルケースになりうると考えられます。

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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