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ベーリング海南東部陸棚域におけるプランクトン群集の経年変動

大橋理恵(平成24年修士課程修了)

現在:(株)竹田食品
 ベーリング海南東部は世界有数の好漁場ですが、近年では円石藻ブルームの頻発、ミズナギドリの大量斃死、大型クラゲ類の大量発生など、気候変動に関係した生態系構造の変化に伴う現象が報告されています。当海域において、一次生産と高次生産をつなぐ仲介的な役割をもつ動物プランクトンの群集構造や種組成の長期変動には不明な点が多くあります。そこで、1994-2009年夏季のベーリング海南東部陸棚域における動物プランクトン試料を解析し、カイアシ類の出現個体数、乾重量バイオマスおよび群集構造、ヤムシ類の出現個体数、乾重量バイオマスおよび体長組成の経年変動を明らかにし、その経年変動の要因を考察しました。

 調査期間を通して水温は寒冷期 (1994-2000年)、温暖期 (2001-2005年) そして寒冷期 (2006-2009年) へと変動しており、この水温のレジームシフトに対応して、カイアシ類の出現個体数およびバイオマスは、寒冷年に多く、温暖年には少ない傾向がみられました(図1)。また、クラスター解析の結果、カイアシ類群集は6グループに分けられ、水平分布と経年変動は明確に分離しており、群集を分ける主な要因は緯度と水深であることが明らかになりました。このように、カイアシ類群集に寒冷年と温暖年に対応した経年変動がみられたことは、寒冷年と温暖年の春季植物プランクトンブルームの規模と期間の差によると考えられました。

   ヤムシ類の個体数とバイオマスも、2000-2004年に少なく、1996-1999年および2005-2009年に多く、体長組成はいずれの採集年でも、2峰ないしは3峰のコホートが検出され、2003年と2004年には成熟個体の割合が顕著に少ないことがわかりました。また、ヤムシ類の出現個体数と主要カイアシ類出現個体数との間には極めて高い正の相関があり、ヤムシ類の経年変動はカイアシ類出現個体数に同調していたことが示されました。

 当海域では、高次捕食者で漁獲対象であるスケトウダラにとっても、寒冷年と温暖年は餌の多寡の差をもたらし、本研究の結果のように寒冷年は餌環境が良く加入個体群が増加しますが、温暖年には餌環境が悪く加入群が減少すると考えられており、このようにベーリング海南東部陸棚域では、気候変動がもたらした一次生産の規模とタイミングが、低次生産から高次生産までをコントロールしており、気候変動が海洋生態系に与える影響が明らかになりつつあります(図2)。

上記修士論文の内容が、雑誌「Deep-Sea Research II」に掲載されました(2013年10月1日)。
Ohashi, R., A. Yamaguchi, K. Matsuno, R. Saito, N. Yamada, A. Iijima, N. Shiga and I. Imai (2013) Interannual changes in the zooplankton community structure on the southeastern Bering Sea shelf during summers of 1994-2009. Deep-Sea Research II 94: 44-56.

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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