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北部北太平洋における毛顎類の
生活史と経年変動に関する研究
西内 耕(平成11年博士修了)
現在:西海区水産研究所研究員(nishikou@affrc.go.jp)
 毛顎類(もうがくるい)とは、顎毛と歯列を持った頭部と細長い躯体からなる大型の肉食性動物プランクトンで、その体の形状から「矢虫(ヤムシ)類」とも呼ばれています(図 1)。毛顎類は沖合域の動物プランクトン群集ではかいあし類に次いで優占し、世界中の海洋において毛顎類生物量はかいあし類生物量の10〜30%と見積もられています。毛顎類は主にかいあし類を摂食する一方で魚類など高次捕食者の餌生物となっており、高次の捕食者へエネルギーを輸送する仲介者として重要であると考えられていますが、外洋域に生息する毛顎類の生活史に関する研究はほとんどありませんでした。本研究は北太平洋亜寒帯域における毛顎類の生態学を大きく前進させる目的で、親潮域における連続採集試料から優占種の個体群構造と分布深度を観察し、その生活史を解析しました。また、1979年から1997年の19年間にわたってプランクトン採集が継続された中央北太平洋の試料を観察し、毛顎類の個体群の経年変動についても解析を行いました。
 親潮域で優占した毛顎類はSagitta elegans, Eukrohnia hamata, E. bathypelagicaおよびE. fowleriの4種でした。分布深度は種によって異なり、S. elegansは250 m以浅の表層に、E. hamataは250-500 m、E. bathypelagicaは500-1000 m、E. fowleriは1000-2000 mに分布していました。産卵期も種によって異なり、S. elegansは晩春〜夏、E. hamataは秋〜初冬、E. bathypelagicaは春〜夏、E. fowleriは周年産卵していると考えられました。体長の季節変動を解析したところ、S.elegansの世代時間は2年、E. hamataは4年を生きると推定されました(E. bathypelagicaE. fowleriの世代時間は不明)。経年変動の解析では北の海域のS. elegansには偶数年に多く、奇数年に少ない明確な2年周期の変動、E. hamataには10年規模の変動がそれぞれ認められ、前者にはカラフトマスの捕食、後者には長周期の気候変動が影響している可能性が示唆されました。
 本研究により、好適な水温環境(北方水系)においては、毛顎類の個体数変動には直接的・間接的な多様な効果が働いていて、しかもその要因は種によって異なることが分かりました。また分布の南限に近い不適な水温環境では、水温が直接的な制限要因となっていることもわかりました(図 2)。
図2. 夏季の太平洋において毛顎個体数を左右する要因(別窓 phg形式)

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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