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西部北極海における動物プランクトン群集の水平分布および経年変動

松野孝平 (平成25年博士課程修了)

現在:国立極地研究所特任研究員
  近年、北極海では海氷面積の減少が観測されており、その劇的な変化は太平洋側北極海(西部北極海) で顕著です。海氷域の衰退は海洋環境、さらにはプランクトンなど海洋生態系に影響を及ぼすことが懸念されていますが、その詳細は不明な点が多いのが現状です。西部北極海生態系の二次生産者である動物プランクトンは、魚類や鯨類の餌資源として重要で、当該海域の動物プランクトンバイオマスにはカイアシ類が優占します。本研究は、北極海の海氷域衰退が動物プランクトン群集に与える影響を評価することを目的とし、2008年8〜10月の西部北極海と1991、1992、2007および2008年7〜8月のチャクチ海において採集された動物プランクトン試料を実体顕微鏡下で検鏡・計数し、群集構造の水平分布と計年変動を解析しました。
図1.1991、1992、2007および2008年のチャクチ海における動物プランクトン群集のクラスター解析の結果。
  調査を行った4年全ての動物プランクトン出現個体数に基づいてクラスター解析を行ったところ、動物プランクトン群集は大きく4つのグループに分けられました。各グループの分布は経年的・水平的に明確に分離しており、1991/92年はほぼ同様の水平分布でしたが、2007/08年は各グループの水平分布が北にシフトしており、特に2007年にはリズバーン半島以南に太平洋産種によって特徴づけられる群集が認められました (図1)。夏季チャクチ海における動物プランクトン群集の経年変動は、出現個体数やバイオマスが1991/92年よりも2007/08年の方が高くなっていました (表1)。海氷域の衰退は、栄養塩を豊富に含む太平洋水の増加を意味しており、生物生産という観点ではプラスの効果がありますが、北極海固有の生物群集が、太平洋水の流入によってより北方に押し上げられることを同時に引き起こしており、生物多様性という観点ではマイナスの影響があることが明らかになりました。

  また、2010年にも北極航海に乗船し、様々な観測を行ってきました。その航海の様子はJAMSTEC北極圏研究グループのブログ(http://www.jamstec.go.jp/rigc/nhcp/mirai2010/)に掲載されています。

 上記修士論文の内容が、雑誌「Polar Biology」に掲載されました(2011年7月28日)。
Matsuno, K., A. Yamaguchi, T. Hirawake and I. Imai (2011) Year-to-year changes of the mesozooplankton community in the Chukchi Sea during summers of 1991, 1992 and 2007, 2008. Polar Biology 34: 1349-1360.

. 表1.1991、1992、2007および2008年夏季チャクチ海における物理環境と動物プランクトンの特徴の経年比較。

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北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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