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アマモ場から分離した殺藻細菌の殺藻性状

黒田麻美(平成24年修士課程修了)

現在:同研究室博士課程在籍中
 赤潮は養殖魚類や二枚貝の大量斃死を引き起こし,水産業に大きな影響を与える重要な問題であることから,これまでに様々な被害軽減策が提案されてきました。近年,有害有毒藻類に殺藻効果を示す殺藻細菌が,大阪湾においてアマモの葉体に多く付着生息することが発見されたことから,殺藻細菌の供給源としてのアマモ場の赤潮防除能が期待されています。本研究では熊本県上天草市の宮津湾に自生しているアマモ場において,殺藻細菌を探索し,さらに分離した殺藻細菌の殺藻性状を調べました。

 2010年5月,熊本県水産研究センターのご協力によりアマモ場でアマモ葉体を滅菌容器に採取しました。容器に滅菌海水を加えて500回強振することで,アマモの表面に付着したバイオフィルムを剥離し,その海水から細菌を分離しました。そして分離した細菌殺藻能を有するかどうかを,深刻な赤潮被害を招く藻類種の1つであるラフィド藻Chattonella antiquaの培養株に細菌を添加する二者培養試験を行うことで検証しました。分離した細菌のうち,C. antiquaに対して短期間で殺藻作用を示した殺藻細菌株 (ab2株・ab3株) について,二者培養におけるC. antiquaの細胞数と細菌数の変動を調べました。また,その他の藻類に対する殺藻試験も行いました。
   C. antiquaの培養株 (約3000 cells mL-1) へ,ab2株及びab3株を初期密度が102〜 103 cells mL-1となるように添加すると,C. antiquaの細胞数は培養1日目から減少し,3日目には全滅しました。このとき細菌は約107 cells mL-1まで増殖していました (図1) 。これより,2株の細菌がC. antiquaを殺し,その死骸を栄養源として増殖したことが分かりました。また両株がC. antiquaだけでなく,養殖魚類の斃死の原因となるラフィド藻H. akashiwoや,渦鞭毛藻Heterocapsa circularisquamaなどに対しても,殺藻または増殖阻害作用を示しました。さらに,この2株は16S rRNA遺伝子の部分配列の系統解析により,他の海域で発見されたCytophaga属の殺藻細菌株に近縁 (相同性97%) であることが明らかになりました。この殺藻細菌株は大阪湾からも検出されており,アマモに付着する細菌として重要な菌株であると考えられました。

 本研究において,大阪湾だけでなく,Chattonella赤潮の頻発する有明海宮津湾のアマモ場においても殺藻細菌が分布すること,そして得られた細菌株が強力な殺藻作用を示したことなどから,アマモ場が殺藻細菌の供給源として機能することで赤潮防除能を発揮できる可能性があると考察されました (図2)。

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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