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噴火湾における春季ブルームの動態
亀井良則(平成14年修士修了)
現在:岡山県水産試験場
 北の海では冬季に盛んな水の上下混合によってもたらされた栄養塩を利用して、春に植物プランクトンの大増殖がおこります。この春の植物プランクトン大増殖は桜の開花になぞらえて「春季ブルーム(Spring bloom)」と呼ばれます。北海道南部の噴火湾において自動採水器を用いた時系列採水とセジメントトラップ(上から沈降してくる粒子を時系列に採集する機器)試料を解析することにより、春季ブルームの動態を解析しました。

 湾内において植物プランクトン量(バイオマス)は2月末に急激に増加しました。これはこの時期湾内に流入する親潮によって水柱(すいちゅう)の安定度が増したためと考えられます。植物プランクトンが増殖するためには水温、栄養塩のほかに、植物プランクトンが表層に留まれる水柱の安定度が重要です。3月末にも植物プランクトンバイオマスは再び増加しましたが、これは3月中旬から表層ではじまった、日射量の増加による水温上昇にともなう水温躍層(すいおんやくそう)の形成によって水柱安定度が増したためと解釈されます。
種類を解析したところ、春季ブルーム初期から盛期にかけては珪藻類のThalassiosira属が優占していました(図 1)。ブルーム後期にはOdontella auritaChaetoceros属が優占しました。また、同じ属内でも出現ピークを示す時期は種によって異なり、T. pacificaT. anguste-lineataT. nordenskioeldiiの順にピークがありました。この春季ブルーム期における短期間の種の遷移は、各々の種の増殖に適した環境が互いに異なることを示しています。

図1 Thalassiosira pacifica
セジメントトラップでとらえられた総炭素粒子に占める珪藻の割合は、春季ブルーム期以前は0.7%でしたが、水中内の珪藻バイオマスの増加に伴って増えはじめ、2月末から3月中旬にかけては80-100%の高い割合を占めていました(図 2)。珪藻の割合はブルーム期以降は再び3%以下の低い値に戻り、春季ブルーム期には表層から海底へ沈降する粒子の大部分が珪藻類によって占められることも分かりました。
 このように、植物プランクトンの春季ブルームは、短期間に変化する生息環境に速やかに応じて増殖、休止を行う様々な種類の珪藻によって形成されていることが分かりました。また、春季ブルーム期に圧倒的な現存量を誇る珪藻類は増殖休止後、速やかに沈降し、海底への物質輸送の多くを担っていることが分かりました。

 Copyright 2003 Plankton Laboratory
北海道大学大学院 水産科学研究科 多様性生物学講座(プランクトン教室)

 

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